「情熱と姿勢の向かう先」
私の指ドラム教室に通い始めて1年以上経ち、Shogun Beatz式の叩き方をほぼマスターした生徒さんがいます。
彼の情熱はとどまることを知らず、アメリカの覆面スーパーフィンガードラマー「Dokbrass」のオンラインレッスンに参加し、私はそこに通訳として参加してきました。
Dokbrassと私自身は、以前から動画にコメントを入れたり貰ったりの関係で、お互いに指の技術に特化したプレイヤーなので、何か通じ合う部分があるなぁと感じていましたし、初めて動画を見て一目惚れしたくらいですから、通訳と言えども授業を体験できることに興奮して嬉ション寸前でした🐶
私と生徒さんは夜8時、Dokbrassの現地時間は朝7時でした。
朝早いのにも関わらず、とてもナイスガイで(朝早いのはあんま関係ないっすね🙇🏻♂️)、それはそれは素晴らしい授業内容を垣間見てしまいました!
詳しい内容はご本人の活動に差し支えありますので、全ては話せませんが、同じフィンガードラム講師として実に有意義な経験をさせてもらいました。
Dokbrassは基本的にはレギュラースタンスと同じフォームではありますが、一般的なレギュラースタンスのプレイヤーとの根本的な大きな違いは、「親指を使う」ということが挙げられます。
私自身が教えているのはオルタネート(Alternate、左右交互)スタンスですが、私も親指を使います。親指を使うメリットは数多くあり、正直、「スタンスは何でも良いが、親指は絶対に使った方が良い」と断言できるくらい、私も、Dokbrassも親指の重要性を認識しています。
使える指が増えることで、物理的に有利なのは容易に理解できるかと思いますが、Dokbrassの親指の使い方の場合、私の親指の使い方のメリットとは違うメリットがありました。
彼の右手は一般的なレギュラースタンスのプレイヤーと同じく、主にハイハットを担当します。他のトッププレイヤーと同様、ニュアンスが絶妙に違うハイハットの音を2つ、それぞれをパッド(2個使用、彼の場合その2個は上下の位置関係)に配置しますが、彼は親指と人差し指でそれらを叩きます。
ここにDokbrassならではの最大のメリットがあります。
彼は、正面にあるMPCに対して、少し肘を張るような、斜め横から指を置くようなフォームで、位置的に下にあるパッドを親指、上側パッドを人差し指で叩きます。丁度手のひらと甲を交互に見るような腕の動きで叩きます。
試して見るとわかりますが、これは人体の構造上、実に効率的な動作であることに疑いの余地はありません。
一方、一般的なレギュラースタンスだと、人差し指と中指、または中指と薬指のどちらかのコンビネーション(この場合のパッドの位置関係は横、隣同士)で叩きます。
そして、私自身の親指の使い方はかなり特殊です。
私の親指の構造は少し珍しいのか、親指の関節が逆方向に全く曲がりません。皆様の多くは親指を立てた「イイね」のポーズをすると、爪先に向かうにつれてカーブを描きますが、私の親指は完全にストレートです。
ですから、私が親指を使う際(私の場合、親指は主にKickを担当)には、上から垂直にパッドに突き刺すような動作になります。
その最大のメリットは、ほぼ振りかぶる動作もなく、最小限のわずかな上下運動のみで叩くことができます。
それぞれに、指の使い方の違い、メリット、デメリットが存在しています。
まだここでは説明しきれない詳細な情報がそれぞれの叩き方に沢山あり、練習が進むにつれて、立ちはだかる壁の様に何度も選択の瞬間があり、その選択の壁には必ずメリットとデメリットの両方が用意されています。
そんな中、Dokbrassもしきりに言っていましたが、
「Economy of Motion」という言葉が我々の共通項目の1つであることを再認識しました。
MPCを続けていくことを本気で考え、指が動かなくなるまで、末長くプレイヤーで居続ける覚悟や決意の表れとして、この「効率的な動作」への研究意欲が湧き上がる、とも言えるのかな、と思います。
初心者、初級者の時期、叩き方、フォームなどは、演奏面での理想を実現する為の初期段階であり、長い時間プレイできるようにする為にも、皆様それぞれの人体構造上の特徴、やり易さ、展望などを把握して、それぞれにとって正しい型を見つけることがとても大事になってきます。
また、私自身も、今までの数多くの気付きや変更、修正をして来ましたので、これから始める方や行き詰まってしまっている方々の気持ちが痛いほどよくわかると思っており、何者でもなかった私自身をMPCプレイヤーと自称できるまでにしてくれたフィンガードラムへの恩返しとも言えるように、そして、生徒さん達に有意義な時間を提供できるように、音楽愛と人間愛を忘れずに日々精進して参りたい所存でおります。
今回のDokbrassの通訳で気付いたのですが、まず、こんなに通訳が楽しいと思ったことは初めてで、「できるだけ正確に翻訳したい」とここまで強く思ったのも初めてです。
やはり、自分自身が好きなモノに関わり、深く掘り下げることで、成長や発見に気付き、理想に向かって進んでいける流れの中に身を置くことが特に大事だと考えます。
収入や生活への不安や悩み、不労所得や楽して稼ぐことなど、本来音楽自体とは何も関係の無い事柄を頭の中で混ぜ合わせて音楽活動をすると、日に日に邪念が産まれることがあります。もちろん人によりますし、一概には言えませんが、音楽以外の部分の比重が偏り過ぎると、音楽の本質に辿り着く可能性は少なくなり、最初に思い描いた「上手くなりたい」「かっこ良く叩きたい」などの「初心」を忘れがちになるのかなと思います。
私のような知名度のない、作品を出してるのかどうかよくわからない、いわゆる売れてないミュージシャンがこんなことを言うのもどうかと、自分自身でも思いますが、「売れているからレベルが高い」とか、「売れなきゃ意味ない」とか、巷で言われるような文言は、私にとっては只の妄想であり、ただただ愚かな邪念として忌み嫌っています。
ボンボクラって感じです。そりゃあ沢山稼げれば家族を養うのは楽になっていきますが。
本来、お金なんて、人によって価値が変わる紙切れであり、知名度なんて、どれだけ人の目に止まったか、だけの実体の無い概念ですから。売れなくても、いつまでも覚えていてくれたり、聴いてくれたりするファンがいるミュージシャンが1番幸せです。
今まで何十人と会って来ましたが、「昔一回売れたんだけどねー」っていう心残りがありながら、そんなにやりたくない仕事をしなきゃならないのって、何だか寂しいじゃないすか?
全く金にならないけど、楽しくできてるなら、そんな方々よりも圧倒的に音楽を楽しんでるってことですよね!
フィンガードラマーとして、この特殊な音楽コミュニティに属する1人のミュージシャンとして、自分自身ができることを理解して、1つずつ進歩をし、成長を自己認識していくことで、生徒さん、コミュニティ、そして自分自身に何を与えることができるか、ということから目を逸らさずに叩き続けること。まるで座禅をし続けるかの如く、それ以外にやるべきことなどない、と強く心に決めた「初心」を貫いていきたいと思いました。
今回の通訳は初めての経験でしたが、Dokbrassからは、「フィンガードラミング業界の垣根を越えるあなたの姿勢と、コミュニティへの貢献に感謝します。」とお褒めの言葉を頂きました。
彼はかなりの人格者で、レッスンやPatreonなどで頂戴した金銭を元手に、MPCや機械の知識や技術を活かして、勉強や音楽など、色々なことができる外付け機器がついたオリジナルのタブレットを製作しています。
200台程度をエルサルバドルの貧困層の子供達に寄贈することをゴールとして活動しています。大変素晴らしい活動で、同じフィンガードラマーとして、人間として、本当に尊敬すべき人物です。
読者の方の中で、どなたか海外のフィンガードラマーのレッスンを受けたいが、英語がちょっと、、、!、と思う方がいましたら御連絡ください。
私が直接交渉して仲介、通訳いたします!もうすごい楽しかったもんで!
毎週水曜日の夜になると思いますが、毎回違う題材でコラム書かせて頂きますので、また変態指ドラマーの蘊蓄と含蓄、読んでくだされば最高に幸せです!でわ!
Shogun Beatz 九拝
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